「確か次はこっちだよな」

「あ、でもあっちに行ってからこっちの方がいいかも」

「え?…あ、そうかこっちトラップあるもんな。だったらそっちがいいよ」

「それから向こうの端まで行けば次のフィールドに進めるから」

「だな、じゃ行こうぜ!」


あっちだ、こっちだ、と漠然とした会話をしながらも、何故か通じ合っているのはとヴァンだ。

『小遣い稼ぎがしたい!」と外出する許可を貰いにヴァンとパンネロがバルフレアの処に来たのは、つい先刻。







motive







せっかくと共に穏やかな昼食を過ごしているのにとんだ邪魔が入った。


それだけで用件が終われば良かったものを、『トレジャーして大儲けしてやる』と愉悦を含ませヴァンが叫んだものだから、
がつられて目を輝かせたのは言うまでもなく…。



突然、打ち切られた幸福な時間の替わりに訪れたのは炎天下の野外。
金銭的に困っていない自分にとっては、やる気の欠片も出ない。

かといってをヴァンに預けるなど選択肢として有り得なかった。





方向があやふやになりそうなほど広大なフォーン海岸の砂漠のど真ん中で、
この二人は大まかな地図が頭の中にあるのか、何も見えはしない遠くを指刺しながら未だに審議中だ。


「いいから、早く行けヴァン」

「何だよバルフレア、その言い方さー」

言葉を出すのが億劫で、追い払うように手を振るバルフレア。

そしてには指を拱き、自分の方へと近づけさせた。



「どうしたの?熱中症になった?」

「違う。もう少し下がってろ。前衛に出すぎだ」

「でも、先に行かないとヴァンが全部トレジャーしちゃうんだもん」

少し拗ねた言い方の
だが彼女が装備しているものを考えれば当たり前の指摘だ。



「遠距離が売りの銃を、剣士と同じ立ち回りで使う奴がどこにいんだよ」

「正論だね……でも悔しいんだもの」


またまた拗ねたの頭をひと撫でしてバルフレアが歩き出す。


「大丈夫だ。ヴァンの運ならどうせ、サビのかたまりが精一杯だろ」

「そっか、そうだね!」



と、合点のいったは掌をパチンとうち合わせニコリと笑う。
それを聞いた本人は装備していた剣を振りかざし怒り出す。



「何だとーーー!!こんにゃろッ」

「だって一番低いじゃない、ね、パンネロ?」

「。。うん。確かに」




救済してくれると思っていたパンネロまでにも見捨てられたヴァンは地団駄を踏んでいた。
そして何を思ったのか、いきなり止まると、ビシリッとの方を指差し宣戦布告を申し立てたのだった。


「どっちが高いお宝を手に入れるか勝負しろっ!!」


絶対に自分が勝つといわんばかりの勝気な態度。
安い挑発にいつもは乗らないが、熱風に蝕まれた頭は容易くそれを受け入れる。


「受けて立つわ!!!負けないわよ!」


腰に手を当てフンッと鼻を鳴らし威張る態度で胸を張った

こうしてトレジャーハントの幕が切って落とされた。
巻き添えを喰った二人は同時に頭を抱え、長い長い溜息を漏らしているのは言うまでもない。









お互い二人ずつに分けれて先へと進む。もちろん2組とも別方向に。
意気揚々と足を進めるの背中を若干冷ややかな視線で後を追うバルフレア。

折角、海岸まで来たというのに何の色気も素っ気もない。
このまま二人でとんずらしたいところだが、あの様子じゃ聞きそうにも無かった。


砂丘を上がるたびに周りを見渡し、敵が現れれば頑張って銃を構え一生懸命なのだから。

そんな微笑ましくもある様子を傍観して幾分経った頃から、の様子に挙動が見られるようになった。
不思議に思いに声を掛けてみるが『だ、大丈夫よ!!』と、明らかに困惑の色がある返事が返ってきた。



バルフレアは額に手をやり日除けを作るとグルリと辺りを見回す。


いつも飛空挺に乗っている自分にとって場所の把握や高度を確認するために、
目印になるものを瞬時に覚えるクセがあった。

それはどのフィールドでも同じ事で、一度来たこの場所を記憶と照らし合わせると、おおよその見当をつける。



「間違えたな、の奴…」



相手が行こうとしているところも察知してこのルートが間違えである事にも気付く。
容易くバレてしまったの迷子をどうしたものかと頭を掻くバルフレア。


、疲れてないか?」


遠まわしだが軌道修正できるよう歩みを止めようと試みる。


「平気よ!」


案の定な返事が返され、相手の好きなようにさせてやるかと考えた。
もし本当に迷子になって自分に泣きついてくればそれはそれで苛めがいがある、そう思ったからだ。

クスッと小さく笑い、の方へと歩いていく。
真面目な表情で考えを廻らせている相手の様子を見つつ、風に靡いた髪をそっと掬い上げる。



「怪我はしてないよな」

「え、、、ええ」

「じゃあ、次はどっちに行く?」


あっちよ!と間逆の方向を指差し焦るように足を速めたの後をゆっくりとした速度で追いかける。





の困った顔をもっと見ていてもいいのだが、このままヴァンに負けるのも癪に触るな、と思い直し
追いかけっこもこれで終わりにしなければと考えていると、丘の上で立ち止まり動かなくなった



きっとお望みの景色が見られず、不正解だったことにショックを受けたのかもしれない。
優しくなだめてやろうと、バルフレアはそっと手を伸ばすと、が急にクルリと身を翻し大声を出す。



「あったわ!」

「?」

「宝物よッ!!!」


華の様な笑顔を浮かばせたと思ったら、いきなり両手を広げ自ら懐へ彼女が飛び込んでくる。

一瞬意味が分からなかったバルフレアだったが、遅れて行動の意味を理解すると、鼻で息を吐く。


顔すら上げず、むしろ俯くようにしがみついたままのに、
バルフレアは、思っている言葉を口にした。



「自分で言って照れるな」

「………………」

「沈黙は答え、か」

「……言わないで」



頭を優しく撫でてやれば、背中にまわしていた腕を離し両方の掌で顔を隠す
指先を少し開きそこからバルフレアを覗き見るため、顔色は窺えない。



「自らチャームをかけたのか?器用な奴だな」

「前からかかってますけど…」



そりゃ、好かった。なんて軽くあしらわれて恥ずかしさが余計に増してしまった。
指を隙間なく閉じて完全に相手を遮断してると、優しく腰に手を回されそのまま歩かされる。



「景色を堪能するのもこれくらいにして、さっさとトレジャーして帰るぞ」

「…それって、つまり、知ってたんだ間違ってたって…」

「俺が知ってたって分かってたんだろ?」

「それは、、、秘密」



クスクスと小さく笑うは、腰にある相手の手を掴みそれを解くと
反対の手で自分の指先を絡ませ繋いだ。


「こっちの道も正解だよ?」



チラリと目線だけをバルフレアに向けて答えた



「二人っきり。・・・でしょ?」


「ったく・・・・」



調子のいい事を口にして逆手に取った反則技に嫌でも眉が寄る。
嫌だからではなく気恥ずかしさと純粋さにだ。


「溜息吐きたくなるな」

「どうせ馬鹿な考えですよ」

「半分はな」

「じゃあ残りは?」

「聞いたら泣くかもな」


片方の眉を上げバルフレアがに答えを求めてくる。
明らかに作為的な輝きが見えるその瞳に見入られているが言い訳を口にする。


「純粋なんだから私って」


余にも苦しい答えにバルフレアは目線を逸らし鼻で小さく笑った。


「どこまでボジティブなんだよ」

「ご覧の通り」


本当に純粋だったら、わざわこんな所まできて二人きりになろうとは考えることはないだろう。

相手の不純に自分も合意したからこその結果に聊か不満を感じ、何か一興盛り込もうと考えていると、
が面映ゆそうに口を篭らせた。


「あの、さ、、、きっと夕焼け綺麗だろうね」

「だろうな。地平線が見渡せるからな」

「散歩、、したいな。。。。。一緒に」


今更そんな事を言うのに何を畏まる必要は無いとバルフレアの長い指先がの額を小突く。



「断るわけないだろ」

「あ、えと、そうじゃなくて」

「じゃあ何だよ?」

「こんな風に、手、繋ぎたいなって」


言われて思い起こせば、腰に手を回して歩く方が断然多い。

口元を上げて優しく微笑みながら、の目の高さを同じにするバルフレア。



「ああ、分かった。繋ごうぜ」

「本当?」

「手、以外にもな」

「―――なっ…」



この言葉に眩暈がしたのはきっと日差しのせいだ。絶対間違いない。


「何だ。お前もしかしてヤラシイコト考えたんじゃないだろうな」

「そんな事ないって!」

「もちろんイクだろ?」

「行くに決まってるよ」

「やっぱりそうゆうことか」

「待って、待って、違うってば」

「気にするなって、後でゆーっくり聴いてやる。色々とな」

「もーーーー、知らない!!!どっか行って!!!」

「じゃあ、手を離せよ」

「嫌ッ!!!」



一歩近寄れば掴まえられる距離。

寄せては返す波と同じように、もうすぐ胸の中に戻ってくるのだからここで待とう。

互いに小さく笑みを浮かべ、当たり前の様に唇を重ねて思う。




一番繋がりたいと願うは、心だから―――


もう一度唇を重ねた。










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みきさん、遅すぎてごめんなさい。
きっとこれを見ることは無いのではと思いながらUPさせて頂きました。

言葉のニュアンスは同じだけど意味が違う言い合いになりました。
バルフレアは聡いのできっと見透かされたら恥ずかしいでしょうね。
それが自分の間違いとかなら尚更で…。

みきさんに気に入ってもらえたら幸いです。
リクエスト頂きありがとうございました。

ユウ